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今回の執筆者: 松崎由貴子

Skantique(スカンティーク)オーナー。独自の審美眼でセレクトした北欧のヴィンテージ&アンティーク品をオンラインショップで販売しながら、日本での展示販売会も開催。そのストーリー性のある美しい品々に魅了されるファンも多い。スウェーデンの手仕事の文化についても『世界手芸紀行』(日本ヴォーグ社)などで伝えている。スウェーデン生まれ日本育ち。2012年よりスウェーデンに戻り、現在はダーラナ地方に暮らす。http://skantique.theshop.jp/


古書を開くのは買付けた商品について知識を深めたいときです。どのようにしていつ頃から作られたのか、その作り方、背景などを知るのに役立てています。スウェーデンで古いものを探し集めて日本で販売している私にとって、古書は多くのことを教えてくれる教科書のような存在です。

日本人の両親のもとスウェーデン南部で生まれ、7歳まで過ごした後、日本で暮らしていました。もう一度大好きなスウェーデンに住みたいと強く思い、単身で渡ったのが2012年です。最初の二年間は、スウェーデン中部ダーラナ地方にある手工芸学校に通いながら、寮生活をしていました。その二年目、学校の図書館に隣接する、寮の部屋を宛てがわれました。手工芸品に囲まれたこぢんまりとした図書館は、なんとも居心地が良く、開いている日は自然と足が向いていました。スウェーデン語もままならなかったので、文章が理解できないと司書さんに教えてもらったり、違う本を持ってきてくれたりしました。その頃から古い手工芸本を読んだり、写真集や古い雑誌を眺めたりするのが楽しみになりました。


手工芸学校の図書館には、本だけでなく古道具や手工芸品が収蔵された部屋もあります。手織りのカーテンから陽が差し込み、手織りのマットの上を歩き、丁寧に作られた椅子に腰を掛け、手工芸本を読める、居心地の良い空間です。

学校修了後、在学中から始めていた買付けの仕事を本格的にスタートしました。北欧のヴィンテージとアンティーク雑貨を探し集めている中で、図書館で読んでいた本を見つけることもありました。何十年と経っていても色褪せないすばらしい本を手にする度、豊かな気持ちにさせてくれました。それまでは買付けた商品について調べたり、商品の撮影の際に使ったりしてきましたが、初めて違った目的で古書のお世話になる日が来ました。
スウェーデンにはspånkorg(スポーンコリ)という、松の木を薄く裂いて編んだかごがあります。その職人さんの取材をさせて頂けることになったのです。事前にかごに関連する古書を集め、片っ端から読んで予習をしました。すると、とある本のページに目が留りました。なんと、若かりし頃のスポーンコリ職人が載っていたのです! 初めてお会いする前に、彼の姿を本で見られて、嬉しくなったのは言うまでもありません。

買付けた古書が本棚に入りきらなくなると、椅子に積み上げています。そろそろ玉椿さんの元へ送り時です。


取材当日、予習に使った本も持参しました。職人に例のページを見せると、笑顔になられ、当時のことを懐かしそうに話し始めました。「Hantverksporträtt」というその本には、彼の師匠とも言える職人も載っていました。 本のおかげで職人さんとの距離も縮まり、興味深い話をたくさん聞かせて頂きました。初めての取材がするすると進んだのも、この一冊の本のおかげです。その本の存在にも感謝しています。


「Hantverksporträtt」はスポーンコリ職人の取材前に、予習のために読んだ本。左下が若かりし頃のステーン・カーンズ。p.20には師匠のカール・アンダションも載っています。取材した記事は日本ヴォーグ社より発売中の「世界手芸紀行」に寄稿しました。